改正貸金業法 健全な借り手への配慮を(産経新聞)

【一筆多論】

 改正貸金業法の今年6月からの完全施行を前に貸金業者と借り手双方に対する負担軽減策が検討されている。

 借入総額を年収の3分の1までに制限し、上限金利を29・2%から20%へ引き下げる新たな措置の導入で混乱が予想されるためだ。

 経済情勢は一昨年秋のリーマン・ショックを経て、改正貸金業法が可決された平成18年当時と比較して激変した。

 多重債務問題の解決をめざして、国会が全会一致で成立させた法律だが、負担軽減策では景気にも配慮した現実的な対応が必要だ。

 特に焦点になるのが総量規制の導入だ。施行後は借入残高が年収の3分の1を超えている個人は原則新規借り入れができなくなる。貸金業者は利用者ごとの個人情報に基づいて残高のチェックを義務づけられる。

 日本貸金業協会によれば、消費者金融の利用者は約1400万人おり、その半数は借入金が年収の3分の1を超えている。強引な取り立てや詐欺まがいの融資を行った業者に厳しく臨むのは当然だが、今度の規制強化で十分に事業が継続できる個人事業者などまで借り入れができなくなる懸念が指摘されている。

 個人事業者の中には個人名義で借りて運転資金に回している人も多い。完全施行の結果、そうした業者が倒産を余儀なくされるような事態に陥ってしまうとすれば本末転倒である。

 政府が検討中の負担軽減策では総量規制に該当する人の借入残高を段階的に減らせるように、金利の低い債務に借り換えるよう促す。そして、その場合の「新規借り入れ」を総量規制の対象から外すという。十分な相談やカウンセリングなどを経て行われるなら有効だろう。

 しかし、大半の貸金業者は規制強化を先取りして融資を絞る傾向を強め、むしろ少額・短期の資金ほど借りにくくなっている。そのため、個人事業者までがヤミ金融に流れているとされる。政府は一定の要件を備えた非営利のNPOバンクを総量規制の対象から外すことを検討しているが、現行の中小企業向け公的資金支援の拡充などでの対応も必要だ。

 同法ですでに明記されている除外、例外規定の見直しも不可欠だ。現行では住宅ローンや自動車ローンなどを除外するほか、個人事業者などを総量規制の「例外」にする規定を設けている。

 ただし、「例外」が適用されるためには中長期の事業計画を提出しなければならず、これには「ハードルが高い」との不満の声が少なくない。政府は提出書類の簡素化などの負担軽減策も検討するとしている。

 一方、規制強化で借りられなくなる人に対する安全網として「民間金融機関へ協力を求める」点については疑問符が付く。無担保融資のノウハウがない銀行などに対してすべての資金需要に応じるよう求めるのは非現実的だ。

 法律の本来の目的はあくまで過剰融資の抑制であって健全な利用者の資金繰りを制限することではない。重要なのは貸金業が的確に利用される制度設計はどうあるべきかということだ。完全施行による混乱が大きければ法律の抜本的な見直しを躊躇(ちゅうちょ)してはならない。(論説委員・気仙英郎)

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